会社案内が「なんとなく伝わらない」と感じる―― 編集者が教える伝わる文章の作り方

「デザインには時間もお金もかけたのに、なぜか反応が薄い」。会社案内やパンフレットを作った経営者・広報担当者から、そんな声を聞くことがあります。実はこれ、デザインの問題ではなく、情報の「編集」に原因があるケースがほとんどです。今日は、雑誌やムックの編集者が日々使っている技術のうち、会社案内づくりにもそのまま応用できる考え方を4つご紹介します。
①見出しの一字一句に、こだわる

雑誌において、表紙や各ページの見出しは、読者に手に取ってもらい、読み進めてもらうための最重要の仕掛けです。デザインの美しさもさることながら、とりわけ雑誌表紙のみだしは売り上げを直接左右する要素であり、編集長は一字一句を必死になって考え抜きます。たった数文字のコピーのために、何通りもの案を出し、推敲を重ねることも珍しくありません。
たとえば「創業50周年、地域社会に貢献してまいりました」という見出しは、事実ではありますが、読者の記憶には残りにくいものです。これを「50年間、変わらず届けてきたもの」と言い換えるだけで、続きが気になる一文に変わります。会社案内も同じで、表紙やトップページに並ぶ一文が「自分に関係がある」と思わせられなければ、その先のページは開かれません。まずは自社の強みを、飾らずに一言で言い切る見出しを作ってみてください。それだけで、その先の文章の説得力がまったく変わってきます。
②読者が「知りたい順」に並べ替える

情報を作り手側の都合(沿革が古い順、部署順など)で並べると、読者の興味とズレが生じます。編集者は常に「読者は何をどの順番で知りたいか」から構成を組み立てます。よくある会社案内は「会社概要→沿革→事業内容→アクセス」という順で作られがちですが、これは会社側の都合による並びです。読者にとっては、①自社の強み→②その根拠となる実績・数字→③会社概要、という順のほうがはるかに読み進めやすくなります。一度、社内資料をこの順番で読み直してみることをおすすめします。
③数字で、読者の目を留まらせる

数字は、読者の目を引く大きな要素です。たとえば「〜ベスト100」といった企画があれば、つい読んでみたくなりませんか。ムックや雑誌の企画では、こうした数字の力を活用したタイトルや切り口が数多く生まれています。「品質に自信があります」だけでは印象に残りませんが、「導入企業◯社」「業界歴◯年」「リピート率◯%」といった具体的な数字を一つ添えるだけで、読者の記憶に残る一文になります。ランキングや比較表の形式にするのも、雑誌企画でよく使われる、数字を活かす方法のひとつです。
④一文一義で、シンプルに書く

雑誌の文章は、一文に複数の情報を詰め込みません。「一文一義」といって、ひとつの文にはひとつの情報だけを載せるのが基本です。会社案内では、つい「弊社は〇〇年創業以来、△△事業を中心に□□分野へも展開し、多くのお客様にご支持いただいております」のように、一文に情報を詰め込みがちです。これを「弊社は〇〇年に創業しました。以来、△△事業を軸に、□□分野へも事業を広げています。」と分けるだけで、格段に読みやすくなります。
ジャンルを越えて培われた「情報整理力」

私たち開発社は、もともと雑誌・ムックの制作を数多く手がけてきた会社です。住まいの実用ムックから教養誌、ビジュアルブックまで、ジャンルを問わず「専門的な情報を、読者にとってわかりやすく面白い形に組み立て直す」ことを積み重ねてきました。取材先の専門家が当たり前のように使う言葉を、読者にとって身近な言葉に翻訳し、見出しひとつ、数字ひとつにまでこだわり抜く。それが、雑誌・ムックの編集現場で日々行われていることです。
この経験から言えるのは、売れる雑誌・ムックづくりと、伝わる会社案内づくりは、実は同じ技術の上に成り立っているということです。読者が誰で、何を知りたがっていて、どの見出し・どの数字なら手が伸びるか。媒体が変わっても、考え方の軸は変わりません。
まとめ
ここでご紹介した4つの視点は、特別な道具や資格がなくても、今日から社内の資料づくりに取り入れられるものばかりです。まずはご自身で試してみてください。それでも「自社の強みが多すぎて一言に絞れない」「客観的に見るとどこが分かりにくいのか判断がつかない」ということは、社内で作っているとどうしても起こりがちです。そんなとき、日々「見出しひとつで手に取ってもらえるかどうかが決まる」という真剣勝負を重ねてきた雑誌・ムックの編集者の視点は、社内では気づきにくい「当たり前」を、外から捉え直すきっかけになるかもしれません。
